さお竹屋と小さな訪問者、司法試験にまつわる記憶
今、時間を計ってソロバンのテスト問題をしていたら、かなり耳障りな音が外から長時間流れてきた。途中で窓を閉めたが気が散ったので、集中できず結果は散々だった。司法試験を受けたときのことを思い出した。
四年生のとき始めて司法試験の短答問題を受けた。場所は後楽園に近い中央大学理工学部の校舎だった。信じられないことに試験中、『さお竹屋』が校舎の周囲に何度もやってきた。「さお竹、エーさお竹」と煩くて気が散った。
今考えてもあんなところに『さお竹屋』が来るのはおかしい。私にだけそう聞こえたのだろうか。しっかりと落ちた後、司法試験受験者用の専門学校のある高田馬場に引越しをした。夏中家から数分の、そこの自習室に篭っていた。
そんなある日、事件が起きた。夕方瀟洒なマンションの裏を通って、うらぶれたアパートに帰ってくると誰かが尋ねてきた。ドアを開けると小学校高学年か中一くらいの男の子が立っていた。「そこのマンションに住んでいる者ですが」と言う。

その後、「話がしたいんです」と言いいながら、フラフラと部屋に入ってきた。大声で叱ると、「ごめんなさい」とすぐに謝って出て行った。急いでマンションを見上げると、私の部屋が見える位置にその子の勉強部屋があり、どうやらそこから見下ろしていたようだ。
一応親に注意しに行った。すると、危険を察知して親より先にその子が玄関に現れた。「もう二度としません。だから言わないで」と半泣きで言う。まだあどけない顔をしている。結局約束をさせただけで、親には言わず戻ってきた。
数日後、アパートのポストに手紙が入っていた。『幸せになってください』と書いてあった。クスッと笑った後、考え込んだ。小汚いアパートに住み、司法試験の勉強漬け(向いていないのに)で暗い顔をしている私は、よっぽど不幸に見えたんだ。
半年後、卒業旅行に行ったインド・ネパールに一ヶ月半いた。その間に、司法試験の勉強を続ける気が失せた。卒業式の数日後、すぐに良い就職先が見つかった。郊外に越すことになり、馬場から去った。『幸せになるからね』と、見えないメモを残して。
頭だけで考えて、自分に向いていない難しい資格にチャレンジするのは考えものだ。なかなか受からないし、例え受かったとしても、幸せになれないかもしれない。好きこそものの上手なれ、は言い得て妙。

四年生のとき始めて司法試験の短答問題を受けた。場所は後楽園に近い中央大学理工学部の校舎だった。信じられないことに試験中、『さお竹屋』が校舎の周囲に何度もやってきた。「さお竹、エーさお竹」と煩くて気が散った。
今考えてもあんなところに『さお竹屋』が来るのはおかしい。私にだけそう聞こえたのだろうか。しっかりと落ちた後、司法試験受験者用の専門学校のある高田馬場に引越しをした。夏中家から数分の、そこの自習室に篭っていた。
そんなある日、事件が起きた。夕方瀟洒なマンションの裏を通って、うらぶれたアパートに帰ってくると誰かが尋ねてきた。ドアを開けると小学校高学年か中一くらいの男の子が立っていた。「そこのマンションに住んでいる者ですが」と言う。

その後、「話がしたいんです」と言いいながら、フラフラと部屋に入ってきた。大声で叱ると、「ごめんなさい」とすぐに謝って出て行った。急いでマンションを見上げると、私の部屋が見える位置にその子の勉強部屋があり、どうやらそこから見下ろしていたようだ。
一応親に注意しに行った。すると、危険を察知して親より先にその子が玄関に現れた。「もう二度としません。だから言わないで」と半泣きで言う。まだあどけない顔をしている。結局約束をさせただけで、親には言わず戻ってきた。
数日後、アパートのポストに手紙が入っていた。『幸せになってください』と書いてあった。クスッと笑った後、考え込んだ。小汚いアパートに住み、司法試験の勉強漬け(向いていないのに)で暗い顔をしている私は、よっぽど不幸に見えたんだ。
半年後、卒業旅行に行ったインド・ネパールに一ヶ月半いた。その間に、司法試験の勉強を続ける気が失せた。卒業式の数日後、すぐに良い就職先が見つかった。郊外に越すことになり、馬場から去った。『幸せになるからね』と、見えないメモを残して。
頭だけで考えて、自分に向いていない難しい資格にチャレンジするのは考えものだ。なかなか受からないし、例え受かったとしても、幸せになれないかもしれない。好きこそものの上手なれ、は言い得て妙。
