玉の腰にすんなりと乗れる人
先日、渋谷のヒカリエで、七年ぶりに再会した友達とランチを楽しんだ。東京近郊の高級住宅地に住む彼女には女の子と男の子二人の子供がいて、お兄ちゃんの方は今、中学受験の準備の真っ最中だとか。
その子が三歳の頃、自宅に遊びに行くと、私が帰るときに「おばちゃんと一緒に行く」と言って、靴を履きかけていた人懐こい子だった。彼の偏差値を聞いてギョッとした。東大合格者を大量に輩出している中高一貫校にパスできる……
控えめに話す彼女の美しい顔を見ながら、その頃私が経理部長、彼女が外国人の社長秘書という在りし日を思い浮かべた。その外資系企業は日本支社を閉鎖する決定を下し、社内は阿鼻叫喚の巷だった。
阪急神戸線沿線のお屋敷街で育ち、しっかりとした教養も身に着けた彼女は、30歳を過ぎて独身だった。ご両親は既に亡くなられていた。海の見えるオフィスで話を聞きながら、彼女の行く末が気になった。しかし、杞憂だった。

渋谷駅前交差点
会社が閉鎖されてから1年もたたないうちに、彼女から結婚式の招待状が届いた。お相手は代々医院をやっている資産家の次男坊で、大学の教師。結婚式で見た彼は、ハンサムで男らしく、優しそうな人だった。完璧。
二人は友達の結婚式で出合ったとのこと、それを聞いてハハーンと思った。結婚相手として偏差値の高い彼が、あまたいる恋人候補の中から彼女を選んだのは、その知性と美しさもさることながら、よく似た環境で育った安心感もあったのではないか。
渋谷の街を見下ろす窓際の席で、「まだ昼間だけど飲んじゃおうか」「あーら、私平気ですよ」と二人でワイングラスを傾けながら、一分の隙も無い上品な装いの彼女を見て、再確認した、日本にも階層があることを。

渋谷109
その子が三歳の頃、自宅に遊びに行くと、私が帰るときに「おばちゃんと一緒に行く」と言って、靴を履きかけていた人懐こい子だった。彼の偏差値を聞いてギョッとした。東大合格者を大量に輩出している中高一貫校にパスできる……
控えめに話す彼女の美しい顔を見ながら、その頃私が経理部長、彼女が外国人の社長秘書という在りし日を思い浮かべた。その外資系企業は日本支社を閉鎖する決定を下し、社内は阿鼻叫喚の巷だった。
阪急神戸線沿線のお屋敷街で育ち、しっかりとした教養も身に着けた彼女は、30歳を過ぎて独身だった。ご両親は既に亡くなられていた。海の見えるオフィスで話を聞きながら、彼女の行く末が気になった。しかし、杞憂だった。

渋谷駅前交差点
会社が閉鎖されてから1年もたたないうちに、彼女から結婚式の招待状が届いた。お相手は代々医院をやっている資産家の次男坊で、大学の教師。結婚式で見た彼は、ハンサムで男らしく、優しそうな人だった。完璧。
二人は友達の結婚式で出合ったとのこと、それを聞いてハハーンと思った。結婚相手として偏差値の高い彼が、あまたいる恋人候補の中から彼女を選んだのは、その知性と美しさもさることながら、よく似た環境で育った安心感もあったのではないか。
渋谷の街を見下ろす窓際の席で、「まだ昼間だけど飲んじゃおうか」「あーら、私平気ですよ」と二人でワイングラスを傾けながら、一分の隙も無い上品な装いの彼女を見て、再確認した、日本にも階層があることを。

渋谷109