ワールドトレードセンターで過ごした日々
9月11日で、ワールドトレードセンターに飛行機が衝突してから12年目になる。最初にノースタワーの94階から98階にアメリカン航空11便が突っ込んだのは8時46分。まもなくサウスタワーにもユナイテッド航空175便が突っ込んだ。
出勤してきた人々が、その日のスケジュールを考えながら、コーヒーを飲んでいる時間帯だ。以前ノースタワーの99階にあった大きな公認会計事務所に通っていた。その時間帯、私はたいていエレベーターの中にいた。
50階までノンストップで行き、そこで110階行きエレベーターに乗り換えた。背が高い人に囲まれているので、見上げるといろんな形のあごが見えた。ホワイトのホワイトカラーが乗客の大半だった。マナーもきちんとしていた。

ニューヨーク州 (トリップアドバイザー提供)
勤めていた公認会計士事務所には、アメリカ中の大学から若いエリートが集まっていた。トレーニングで一緒になった彼らは、映画の一シーンのようにホットな議論を戦わせていた。ぼけっとしていると、「君はどう思う?」と聞かれてとっさに返事ができなかった。
正しく白人で良家の家庭出身という若いCPA(公認会計士)の群れの中に、日系三世の若い二人がいた。どちらもカリフォルニアから転勤になってきたばかりで、一人はクール、もう一人は日本人が忘れた優しさをもっていた。
クールは日本語がしゃべれず、考え方もまるっきしアメリカン。優しいほうはおばあちゃんに教えられたとかで、お年寄りが使う丁寧な日本語をしゃべり、そのせいか中身も古(いにしえ)の日本人のようで周りに細かく気を使っていた。
97階には住友銀行があり、時々仕事で出かけると、担当者がうれしそうに迎えてくれた。2001年9月11日、テロのニュースを見た後、青くなって調べると、住友銀行は既にマンハッタンの別の場所に移転していた。
ほっとしたのもつかの間、サウスタワーに富士銀行が入っていたと知って、愕然とした。私が42ストリートとレキシントンアベニューの交差するコンドに住んでいたとき、前のビルに富士銀行は入っていたのだ。暫くショックが続いた。

ニューヨーク州 (トリップアドバイザー提供)
ノースタワーの隣に、6WTCビルがあり、その中に合衆国関税局が入っていた。ここにはビルで働いている人のための食堂があり、時々ランチを食べに行った。安くて美味しく、デザートのアップルパイを食べる頃にはお腹一杯になった。
食後はノースタワーの前の広場で、同じようにくつろいでいるアメリカ人に混じって、のんびり聳え立つ二つのタワーの上に広がる青空を眺めた。平和な毎日だった。あの時間を、再びあの空間に取り戻すことができたら、どんなに嬉しいだろう。
合衆国関税局の入っていた6WTCも、ツインタワーが崩れたとき、崩壊した。アップルパイを見るたびに、あのビルの食堂で食べたランチを思い出す。周りで食べていた人達は、無事だったのだろうか。
今でもマンハッタンの写真を見るたびに、ツインタワーを探す癖が抜けない。

出勤してきた人々が、その日のスケジュールを考えながら、コーヒーを飲んでいる時間帯だ。以前ノースタワーの99階にあった大きな公認会計事務所に通っていた。その時間帯、私はたいていエレベーターの中にいた。
50階までノンストップで行き、そこで110階行きエレベーターに乗り換えた。背が高い人に囲まれているので、見上げるといろんな形のあごが見えた。ホワイトのホワイトカラーが乗客の大半だった。マナーもきちんとしていた。

ニューヨーク州 (トリップアドバイザー提供)
勤めていた公認会計士事務所には、アメリカ中の大学から若いエリートが集まっていた。トレーニングで一緒になった彼らは、映画の一シーンのようにホットな議論を戦わせていた。ぼけっとしていると、「君はどう思う?」と聞かれてとっさに返事ができなかった。
正しく白人で良家の家庭出身という若いCPA(公認会計士)の群れの中に、日系三世の若い二人がいた。どちらもカリフォルニアから転勤になってきたばかりで、一人はクール、もう一人は日本人が忘れた優しさをもっていた。
クールは日本語がしゃべれず、考え方もまるっきしアメリカン。優しいほうはおばあちゃんに教えられたとかで、お年寄りが使う丁寧な日本語をしゃべり、そのせいか中身も古(いにしえ)の日本人のようで周りに細かく気を使っていた。
97階には住友銀行があり、時々仕事で出かけると、担当者がうれしそうに迎えてくれた。2001年9月11日、テロのニュースを見た後、青くなって調べると、住友銀行は既にマンハッタンの別の場所に移転していた。
ほっとしたのもつかの間、サウスタワーに富士銀行が入っていたと知って、愕然とした。私が42ストリートとレキシントンアベニューの交差するコンドに住んでいたとき、前のビルに富士銀行は入っていたのだ。暫くショックが続いた。

ニューヨーク州 (トリップアドバイザー提供)
ノースタワーの隣に、6WTCビルがあり、その中に合衆国関税局が入っていた。ここにはビルで働いている人のための食堂があり、時々ランチを食べに行った。安くて美味しく、デザートのアップルパイを食べる頃にはお腹一杯になった。
食後はノースタワーの前の広場で、同じようにくつろいでいるアメリカ人に混じって、のんびり聳え立つ二つのタワーの上に広がる青空を眺めた。平和な毎日だった。あの時間を、再びあの空間に取り戻すことができたら、どんなに嬉しいだろう。
合衆国関税局の入っていた6WTCも、ツインタワーが崩れたとき、崩壊した。アップルパイを見るたびに、あのビルの食堂で食べたランチを思い出す。周りで食べていた人達は、無事だったのだろうか。
今でもマンハッタンの写真を見るたびに、ツインタワーを探す癖が抜けない。
