日本人が置き忘れてきたもの
今日は朝からすごいものを見た。開いたばかりのスーパーの前に座って、買ったばかりのレタスに、同じく袋から出したばかりのチビマヨネーズをつけて食べているオジサン。横には蓋を開けたツナ缶が置いてあった。
目が合ったので、「これこれ、そこのお人、家で食べなはれ」くらい言ってあげようかなと思ったけど、本気目をしていたので、言うのを止めた。ふと、ハノイを思い出した。
ハノイで泊まったホテルは旧市街にあった。ホテルの周りの道沿いには夥しい数の人々が座っていて、物を売ったり食べ物を提供したりしていた。食事時になると、フォーを始め、美味しそうなものを食べている人で通りが埋まった。
街路樹のように延々と並んで、一生懸命ものを食べている人の間を歩いていると、時々目が合った。みな本気目で食べていた。ひょっとして今朝のおじさん、ハノイでの強烈な印象が私に白昼夢を見させたのかもしれない。
ハノイの旧市街は同じような通りが迷路のように入り組んでいるので、なかなかホテルに帰れなかった。いつもホテルの前に立っている赤い服を着たドアマン君を見つけると、ほっとして体から力が抜けた。
旧市街は狭い道を車やバイクも通るので、いつもごった返している。しかし歩きながら、妙な安心感を感じたのも確かだ。同じ種族が住む村に帰ってきたような……
東南アジアの国々に行くと、日本人がどこかに置き忘れてきた原始的な人間臭さを感じる。職場や学校でいじめが蔓延るのも、本来持っているはずの人間的な優しさもまた、どこかに置き去りにされてきたからではないだろうか。
ハノイの旧市街に建つ我がスターホテル、ようやく道を覚えたのは、帰る日の朝だった。

目が合ったので、「これこれ、そこのお人、家で食べなはれ」くらい言ってあげようかなと思ったけど、本気目をしていたので、言うのを止めた。ふと、ハノイを思い出した。
ハノイで泊まったホテルは旧市街にあった。ホテルの周りの道沿いには夥しい数の人々が座っていて、物を売ったり食べ物を提供したりしていた。食事時になると、フォーを始め、美味しそうなものを食べている人で通りが埋まった。
街路樹のように延々と並んで、一生懸命ものを食べている人の間を歩いていると、時々目が合った。みな本気目で食べていた。ひょっとして今朝のおじさん、ハノイでの強烈な印象が私に白昼夢を見させたのかもしれない。
ハノイの旧市街は同じような通りが迷路のように入り組んでいるので、なかなかホテルに帰れなかった。いつもホテルの前に立っている赤い服を着たドアマン君を見つけると、ほっとして体から力が抜けた。
旧市街は狭い道を車やバイクも通るので、いつもごった返している。しかし歩きながら、妙な安心感を感じたのも確かだ。同じ種族が住む村に帰ってきたような……
東南アジアの国々に行くと、日本人がどこかに置き忘れてきた原始的な人間臭さを感じる。職場や学校でいじめが蔓延るのも、本来持っているはずの人間的な優しさもまた、どこかに置き去りにされてきたからではないだろうか。
ハノイの旧市街に建つ我がスターホテル、ようやく道を覚えたのは、帰る日の朝だった。
