子供を諭す高校生
ローカル列車に乗っていたら、五歳くらいの男の子とパパが乗り込んできた。途中の駅で列車が信号待ちをしているときに、男の子が別の車両のトイレに行った。パパは心配そうにしていたが、席にいた。
男の子が戻ってきたとき、パパの姿が消えていた。「パパ、どこ、パパがいない、どこ行ったの」と大声で叫ぶ男の子。通路を隔てた隣の席のおじさんはコックリコックリ。他の大人も黙っていた。
そのとき、天の声が。「君のパパはね、トイレに行った君の帰りが遅いから心配して探しに行ったのだよ、きっと。だから心配しなくても、すぐに帰ってくるよ。分かった?」 男の子はぴたりと叫ぶのを止めた。
車内中の大人が声のした方を見た。声の主は、学生服を着た高校生だった。「おまえ、兄ちゃんみたいな言い方だな」と友達から冷やかされて笑っていた顔が清清しい。
パパは程なくして戻ってきた。やはりトイレに探しに行っていたようだ。男の子の大声に驚いてとっさに声の出なかった私は、感心して高校生に笑いかけた。怖かったかもしれない。
走り始めた列車の外は五月晴れ、心にも爽やかな風が吹いた。

男の子が戻ってきたとき、パパの姿が消えていた。「パパ、どこ、パパがいない、どこ行ったの」と大声で叫ぶ男の子。通路を隔てた隣の席のおじさんはコックリコックリ。他の大人も黙っていた。
そのとき、天の声が。「君のパパはね、トイレに行った君の帰りが遅いから心配して探しに行ったのだよ、きっと。だから心配しなくても、すぐに帰ってくるよ。分かった?」 男の子はぴたりと叫ぶのを止めた。
車内中の大人が声のした方を見た。声の主は、学生服を着た高校生だった。「おまえ、兄ちゃんみたいな言い方だな」と友達から冷やかされて笑っていた顔が清清しい。
パパは程なくして戻ってきた。やはりトイレに探しに行っていたようだ。男の子の大声に驚いてとっさに声の出なかった私は、感心して高校生に笑いかけた。怖かったかもしれない。
走り始めた列車の外は五月晴れ、心にも爽やかな風が吹いた。
