クリスマスイブのイチゴのヘタ取り
法律を勉強しながら、目黒の高級洋菓子店でアルバイトをしていたときのお話。有名人も訪れるその店で、いよいよ明日はクリスマスイブ。
どんな素敵な人たちがケーキを買いにくるのか楽しみにしていた私に、店長の冷たい一言。「君、明日は銀座店の二階でイチゴのヘタ取りをするように」
「エーッそれはあまりにもむごい仕打ち」と聞こえるように言ったが決断は覆らなかった。日頃から犬猿の仲であったというか、嫌われていたのだ、たぶん。
素敵なカップルが腕を組んで銀ブラ(古!)を楽しんでいる横を走りすぎて向かった銀座店。二階に上がると、ここはイチゴ畑かと思うほどイチゴの入った箱の山。
イチゴの実を傷つけないように一つ一つヘタを取っていく。失敗したイチゴは貯めておいて、後で一気に口の中に。長時間ヘタ取りをしていると大量のイチゴを食べることになった。店長が知ったら、気絶したかもしれない、たぶん。
夜、ようやく開放されたけどイチゴ腹になっていて、肝心のケーキもご馳走も食べられなかった。イチゴくさい息を吐きながら華やかな銀座を通って帰る道すがら、なんだか涙がこぼれた。
それ以来、目黒店に戻ってから、声優の卵に『へた子』と呼ばれるようになった。あんなにひたむきに頑張ったのに、四年生のとき受けた司法試験はバツ。
卒業旅行にインドに行って、悠久の大地をさ迷い歩いているうちに悟りを開き、帰ったらさっさとベンチャー企業に就職した。
時々思う、あのヘタ取りは何だったのだと。

どんな素敵な人たちがケーキを買いにくるのか楽しみにしていた私に、店長の冷たい一言。「君、明日は銀座店の二階でイチゴのヘタ取りをするように」
「エーッそれはあまりにもむごい仕打ち」と聞こえるように言ったが決断は覆らなかった。日頃から犬猿の仲であったというか、嫌われていたのだ、たぶん。
素敵なカップルが腕を組んで銀ブラ(古!)を楽しんでいる横を走りすぎて向かった銀座店。二階に上がると、ここはイチゴ畑かと思うほどイチゴの入った箱の山。
イチゴの実を傷つけないように一つ一つヘタを取っていく。失敗したイチゴは貯めておいて、後で一気に口の中に。長時間ヘタ取りをしていると大量のイチゴを食べることになった。店長が知ったら、気絶したかもしれない、たぶん。
夜、ようやく開放されたけどイチゴ腹になっていて、肝心のケーキもご馳走も食べられなかった。イチゴくさい息を吐きながら華やかな銀座を通って帰る道すがら、なんだか涙がこぼれた。
それ以来、目黒店に戻ってから、声優の卵に『へた子』と呼ばれるようになった。あんなにひたむきに頑張ったのに、四年生のとき受けた司法試験はバツ。
卒業旅行にインドに行って、悠久の大地をさ迷い歩いているうちに悟りを開き、帰ったらさっさとベンチャー企業に就職した。
時々思う、あのヘタ取りは何だったのだと。
