女性中間管理職は大変だ。これがいっそ社長とかゼネラルマネージャーとかだと自分の思いのままに会社を操れるのだろうが、そうはいかない。
大赤字の外資系の会社で毎月高額の家賃を払っていたときのこと。とうとう期日に支払えなくなり、支払いの延期を大家である大手建設会社に頼みに行った。イギリス人のGMと二人で行ったのだが、もちろん事情を説明して誤るのは私、彼は隣で神妙な顔をしているだけ。
新しいGMが来る前に、前のGMの秘書を辞めさせる必要が生じた。次の秘書を募集するときになって、社内から秘書を望む女性が出てきた。クォリティの高い女性だったが、心配な点もあった。結局募集で適切な秘書を決めたが、後でかなり怒られた、その社内の女性から。
外資系企業の場合、日本の法律や慣例がよく分からない外国人のトップに、いい加減なことを言う秘書や取り巻きがつくと大変だ。管理部門の層が薄く、間違った考えを身につけた頑固な外国人を、きちんと諌めることは難しい。
昇給金額で差がついて以来、2対1で争っている女性たちの上司になった。あるとき、二人組みの一人が泣きついた。「彼女を辞めさせてください」もちろん断った。日々蓄積した度を越えた憎しみは、ものごとを客観的に見えなくさせる。
赤字のため、社員の退職制度を凍結することになった。外国人のボスが英語で説明したことを、日本語で居並ぶ従業員に伝えた。全員が私の顔を憎しみの目で見つめていたが、無理もないこと。
ストレスでとうとう顔におできのようなものができたところに、前の会社(既に日本支社は消えていた)の秘書だった女性から結婚式の招待状がきた。断ったが、スピーチだけは諦めるから出てほしいとのこと。最高級のホテルで、ストレスでドレスの似合わない顔が目立った。新郎がギョッとしていた。
唯一の収穫は…… 苦労を重ねたせいで、口達者になり、元来お人好しの私はいつのまにか「ノーと言える私」になった、それもはっきりと。ああ、しんど。

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