経理は戦いだ、我が戦歴
長い間経理をして糊口をしのいできたが、経理というのも難儀なものである。自分の信念を曲げないようにすると軋轢が起こる、特に上層部と。
コントローラーとして外資系の会社で働いていたとき、日本支社長はフランス人だった。日ごろから何となくそりが合わなかった。そんなある日、社長室に呼ばれた。
営業畑出身の彼は経理方面にうとく、無理なことをしろと言ってきた。そんなことできないと言っても、黙って命令をきけと言う。そこで、絶対にきけないとやり返した。すると怒鳴った。「今すぐここから出て行け!」
私が部屋を出たとたん、わざわざ机を立ってきて、背後からバシーンとドアを閉めた。社内はシーンと静まりかえり、みな下を向いて仕事をしているフリ。興味津々なのは、わかる、わかる。
気のいいオーナー経営者は、使途不明の買い物をしていた。おまけにその物品は行方不明。問い詰めると怒鳴った。「わしが自分の金を少し使ったからって、それの何が悪いんや。あんたは検察官か」それでも追及の手を緩めなかったので、会社を去る羽目に。ふん、信念を曲げるより、よっぽどマシだ。
経理が「わや」になっているという、業績のいいベンチャー企業に入ったとき、どう数えても、特殊な用途のため別においてあるはずの小口現金が足りない。社長と親戚だという、経理のおばさんに聞くと「ちょっと、家の押入れで預かっています」のけぞった。経理が「わや」になるはずだ。
結局、社長を言い負かして、おばさんに辞めてもらった。だいぶたってから、まったく関係のない件で、社長室に呼ばれたついでに言われた。「あんたは性格が悪い」 ああ、経理担当者の悲哀は延々と続く……

コントローラーとして外資系の会社で働いていたとき、日本支社長はフランス人だった。日ごろから何となくそりが合わなかった。そんなある日、社長室に呼ばれた。
営業畑出身の彼は経理方面にうとく、無理なことをしろと言ってきた。そんなことできないと言っても、黙って命令をきけと言う。そこで、絶対にきけないとやり返した。すると怒鳴った。「今すぐここから出て行け!」
私が部屋を出たとたん、わざわざ机を立ってきて、背後からバシーンとドアを閉めた。社内はシーンと静まりかえり、みな下を向いて仕事をしているフリ。興味津々なのは、わかる、わかる。
気のいいオーナー経営者は、使途不明の買い物をしていた。おまけにその物品は行方不明。問い詰めると怒鳴った。「わしが自分の金を少し使ったからって、それの何が悪いんや。あんたは検察官か」それでも追及の手を緩めなかったので、会社を去る羽目に。ふん、信念を曲げるより、よっぽどマシだ。
経理が「わや」になっているという、業績のいいベンチャー企業に入ったとき、どう数えても、特殊な用途のため別においてあるはずの小口現金が足りない。社長と親戚だという、経理のおばさんに聞くと「ちょっと、家の押入れで預かっています」のけぞった。経理が「わや」になるはずだ。
結局、社長を言い負かして、おばさんに辞めてもらった。だいぶたってから、まったく関係のない件で、社長室に呼ばれたついでに言われた。「あんたは性格が悪い」 ああ、経理担当者の悲哀は延々と続く……
