クアラルンプールで聞きそこなった悲恋
クアラルンプールで、庭のすてきなプチホテルに泊まった。高いビル群を見上げながら、プールサイドのデッキチェアに寝そべり、ひんやりとしたレモネードを飲む。手にはペーパーバック。
庭が見渡せる天井の高いレストランで、マレーシア料理のランチタイム。すると突然、体格の良いヨーロッパ系男性が入ってきて、私のテーブルに近寄ってきた。年の頃は、中年と若者の間、困ったことに体がふらついている。
「君は僕の昔の恋人に似ている。彼女はチャイニーズだった」唐突にそう宣言すると、私の前の椅子に座ろうとした。
きりっとした顔立ちのインド系マレーシア人のボーイが、すっ飛んできて言った。「困ります。お客様に迷惑をかけるのは止めてください」
他のボーイも寄ってきて、彼を追い出そうと、白いマニラ麻らしきジャケットの肩に手をかけた。
「手を放せ! ただ、話がしたいだけだ」そう叫ぶと、彼はうるさそうにボーイの手を振り払った。アル中だろうか、ドラッグだろうか、そしてその原因は恋……
ウヮーと思った。世紀のラブストーリーを聞くチャンス、それも悲恋。(多分その頃は)若くてハンサムなヨーロッパから来た若者とチャイニーズ系の髪の長い少女。何、何、何があったのよ。私の好奇心は募るばかり。
でも、ボーイたちは私を無頼漢から守るべく、彼を追い出してしまった。仕事に忠実なのはいいけどさ、聞きたかったのよ、そのラブストーリー。
あーん、世紀のラブストーリーが書けたのに。これって、我がまま?

庭が見渡せる天井の高いレストランで、マレーシア料理のランチタイム。すると突然、体格の良いヨーロッパ系男性が入ってきて、私のテーブルに近寄ってきた。年の頃は、中年と若者の間、困ったことに体がふらついている。
「君は僕の昔の恋人に似ている。彼女はチャイニーズだった」唐突にそう宣言すると、私の前の椅子に座ろうとした。
きりっとした顔立ちのインド系マレーシア人のボーイが、すっ飛んできて言った。「困ります。お客様に迷惑をかけるのは止めてください」
他のボーイも寄ってきて、彼を追い出そうと、白いマニラ麻らしきジャケットの肩に手をかけた。
「手を放せ! ただ、話がしたいだけだ」そう叫ぶと、彼はうるさそうにボーイの手を振り払った。アル中だろうか、ドラッグだろうか、そしてその原因は恋……
ウヮーと思った。世紀のラブストーリーを聞くチャンス、それも悲恋。(多分その頃は)若くてハンサムなヨーロッパから来た若者とチャイニーズ系の髪の長い少女。何、何、何があったのよ。私の好奇心は募るばかり。
でも、ボーイたちは私を無頼漢から守るべく、彼を追い出してしまった。仕事に忠実なのはいいけどさ、聞きたかったのよ、そのラブストーリー。
あーん、世紀のラブストーリーが書けたのに。これって、我がまま?
