忘れられないハリウッドのハロウィーン
子供が一歳八ヶ月のとき、おでこの出た子供に袋のような服を着せ、赤ちゃん妖怪『でこ袋』に仕立て上げ、ハリウッドのハロウィーンに連れて行った。
ハリウッド大通には、禍々しい妖怪達が闊歩していた。おなじみの13日の金曜日のジェイソン、地下室のメロディのフレディ、それにドラキュラやゾンビなどなど。ワクワクする。
さすがハリウッドだけあって、妖怪連のメーキャップも凝っていた。親が見ても逃げ出したくなるようなフランケンシュタインがよろけながら歩いている後ろを、気味の悪い長い鼻をした魔女が焼けた鉄板の上で踊るようなフリをしながらついて歩いている。カップルかしら、素敵。
子供は歩行者天国になっていた道路の端に立って、眉間に皺を寄せて闊歩する妖怪達を見ていた。どうやら、泣く時期を見計らっているらしい。
そのとき、マントを着たドラキュラ伯爵が子供の背後から近づいてきた。そして子供の真後ろに立つと、マントを大きく広げてポーズをとった。次の瞬間、子供はマントの中に吸い込まれていた。そのとたん、物凄い鳴き声がハリウッド大通に響き渡った。妖怪達が振り向いた。
ドラキュラはあわてて、マントを広げて子供を外に出した。物凄い顔をして泣いている『でこ袋』はちょっとやそっとで、泣き止みそうにない。困ったドラキュラは、しゃがみ込んで子供の顔の前に自分の顔を近付けて言った。「Sorry, sorry! Please don’t cry! (ごめん、ごめん、泣かないで)」
そのとたん、子供はひきつけを起こしたように、なおいっそう大声を上げて泣き始めた。口の端から牙を覗かせ、赤い血を流したドラキュラの顔を目の当たりにすると大人でもひきつけを起こす。うちの子、トラウマになったかも。
ドラキュラ伯爵は急いで立ち上がると、私とダンナに丁重に謝った後、しょぼんと肩を落として去っていった。あのとき、彼の鼓膜が破れたのではないかと、ハロウィーンの南瓜を見るたびに心配になる。

ハリウッド大通には、禍々しい妖怪達が闊歩していた。おなじみの13日の金曜日のジェイソン、地下室のメロディのフレディ、それにドラキュラやゾンビなどなど。ワクワクする。
さすがハリウッドだけあって、妖怪連のメーキャップも凝っていた。親が見ても逃げ出したくなるようなフランケンシュタインがよろけながら歩いている後ろを、気味の悪い長い鼻をした魔女が焼けた鉄板の上で踊るようなフリをしながらついて歩いている。カップルかしら、素敵。
子供は歩行者天国になっていた道路の端に立って、眉間に皺を寄せて闊歩する妖怪達を見ていた。どうやら、泣く時期を見計らっているらしい。
そのとき、マントを着たドラキュラ伯爵が子供の背後から近づいてきた。そして子供の真後ろに立つと、マントを大きく広げてポーズをとった。次の瞬間、子供はマントの中に吸い込まれていた。そのとたん、物凄い鳴き声がハリウッド大通に響き渡った。妖怪達が振り向いた。
ドラキュラはあわてて、マントを広げて子供を外に出した。物凄い顔をして泣いている『でこ袋』はちょっとやそっとで、泣き止みそうにない。困ったドラキュラは、しゃがみ込んで子供の顔の前に自分の顔を近付けて言った。「Sorry, sorry! Please don’t cry! (ごめん、ごめん、泣かないで)」
そのとたん、子供はひきつけを起こしたように、なおいっそう大声を上げて泣き始めた。口の端から牙を覗かせ、赤い血を流したドラキュラの顔を目の当たりにすると大人でもひきつけを起こす。うちの子、トラウマになったかも。
ドラキュラ伯爵は急いで立ち上がると、私とダンナに丁重に謝った後、しょぼんと肩を落として去っていった。あのとき、彼の鼓膜が破れたのではないかと、ハロウィーンの南瓜を見るたびに心配になる。
