オバケ屋敷でオバケに謝る中間管理職の悲哀
以前、全国的に営業展開をしている会社に勤めていたとき、日本全国の社員一同が、社員旅行で熱海に集結した。さっそくみんなで、熱海後楽園のオバケ屋敷に入った。
怖いので、前の人の体に次々と腕を回してムカデ状になり、十人位で一列になって入った。ところが何時の間にか、私は一人になっていた。待ちかねていたように、さっそく前から、長い髪をした特別不気味なお化けが近づいてきた。
断末魔のような悲鳴が屋敷中に響き渡った、もちろん私の。何度も叫ぶので、うるささにたまりかねたのか、オバケがお尻を見せて逃げようとした。その時、私の足がまるで脚気のテストの時のように、勝手に跳ね上がった。そしてあろうことか、オバケのお尻を蹴り上げたのだ、それも思いきり。
その途端、オバケはクルリと振り向くと、長い髪の毛と怖いお面を剥ぎ取って、叫んだ。
「何しやがんでぇ、この女(あま)!」お面の下から出てきたのは、オバケより数段怖い顔をしたオヤジ。ヒェー、一難去ってまた一難と思ったとき……
「まあまあ、ここは私に免じて何とか……」と言いながら出てきたのは課長。『どこにいたのよ、もっと早く出てきてよ』と腹の中で毒づいた私。
課長はオバケならぬ茹蛸オヤジに名刺を差し出して、ぺこぺこ頭を下げて謝っている。オバケも出鼻をくじかれたのか、又ズボッと商売道具一式を頭からかぶると、仕事に戻った。
オバケ屋敷の前を通るたびに、「何しやがんでぇ、この女(あま)!」と言ったオバケと、名刺を持って出てきた課長を、懐かしく思い出す。

怖いので、前の人の体に次々と腕を回してムカデ状になり、十人位で一列になって入った。ところが何時の間にか、私は一人になっていた。待ちかねていたように、さっそく前から、長い髪をした特別不気味なお化けが近づいてきた。
断末魔のような悲鳴が屋敷中に響き渡った、もちろん私の。何度も叫ぶので、うるささにたまりかねたのか、オバケがお尻を見せて逃げようとした。その時、私の足がまるで脚気のテストの時のように、勝手に跳ね上がった。そしてあろうことか、オバケのお尻を蹴り上げたのだ、それも思いきり。
その途端、オバケはクルリと振り向くと、長い髪の毛と怖いお面を剥ぎ取って、叫んだ。
「何しやがんでぇ、この女(あま)!」お面の下から出てきたのは、オバケより数段怖い顔をしたオヤジ。ヒェー、一難去ってまた一難と思ったとき……
「まあまあ、ここは私に免じて何とか……」と言いながら出てきたのは課長。『どこにいたのよ、もっと早く出てきてよ』と腹の中で毒づいた私。
課長はオバケならぬ茹蛸オヤジに名刺を差し出して、ぺこぺこ頭を下げて謝っている。オバケも出鼻をくじかれたのか、又ズボッと商売道具一式を頭からかぶると、仕事に戻った。
オバケ屋敷の前を通るたびに、「何しやがんでぇ、この女(あま)!」と言ったオバケと、名刺を持って出てきた課長を、懐かしく思い出す。
